- 2018年11月30日
- 2021年5月8日
- 西表島雑学
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「人事を尽くして天命を待つ」
少し大袈裟かも知れないけど、この場所のために、最近はずっと海図や天気予報とも睨めっこしていて実行するタイミングを図ってた。
そう、目の前はパイミ崎
西表島で1番の難所。ライフジャケットやらカヤックの上に乗せている道具もしっかり固定されているか確認。
リーフ内は行く手を阻むように大きな岩があり、外洋からのうねりがその岩にぶつかって白波をたてて通れそうにない。
しかしそれも計算済み。
「よしっ!」
深く深呼吸して気合いを入れ思い切ってさらに外洋に出る。
風は北東4.5m 潮流は外洋から西表側。後ろからやや強めな風が吹き抜けてくうねりにうまくパドルをあわせて力強く一漕ぎ一漕ぎ。追い風ではない島を越えてきた風が徐々にカヤックを外へ外へと押していく。
大丈夫!ウナリザキよりは荒れてない!
遠くに「仲之御神島」通称おがんの島影
遠く先には、うっすら島が見える。
「仲之御神島」(通称オガン)
ダイビングスポットでも人気のある島が怪しくぼんやり視界に入る。
最大の難所、パイミ崎を超える
少しするとうねりと風が急に落ち着いた。
後ろを振り向くと、パイミ崎から50mほど離れた所にカヤックがいた。
「よっしゃーパイミ崎越えだ!」
心の中で力強くガッツポーズ、そして安堵のため息。肩の荷が下りたとはこの事。自然とニヤニヤしてしまう。
海面を見ると透き通るような青。
水中にカメラを入れるとがれ場の中にいくつものサンゴ礁。海底の景色も気にできる余裕もでてきた。
なにはともあれパイミ崎を単独で越えれた。
時計は12時56分
ここからはゆっくり南海岸の鹿川湾を目指します。
しかし難関を乗り越え快調に進むかと思いきや、なぜかカヤックがあまり前に進まない。
そしてなぜかなぜか後ろから微風が吹き抜けてく。
あれ?追い風?北東なのに?じゃあなぜ追い風なのに進みが弱い?
潮流が悪いのか?謎だらけのまま小さなうねりの中をひたすらパドリング。小さな揺れはゆらゆら、ゆらゆら、カヌーを嫌な感じで揺らします。
沿岸沿いを1時間くらい漕いだ辺りで左手に大きな岩がしっかり見えてきた。おそらくあれがウビラ石。
しかし断続的なうねりにこの頃から気分が悪くなってきてた。日差しがそこまで強い訳でもないのに異様に暑く、汗がジワジワでてきてるのを感じた。
完全に船酔いだ。
ウビラ石にももう少し近づきたかった。
いや余裕があれば、岩に上陸してあの傾斜を登りたかったのに、そんな余裕がないくらい気分が悪い…
少し休憩しようにも沿岸沿いは大きなゴロタ岩ばかりでカヌーを止めれる砂浜なんて1つもない。
仕方なくパドリングを続ける事40分。なぜかまたウビラ石のようなものが見えてきた。
ん?またウビラ石?
どっちがウビラ石?
後から調べてみると、これは獅子岩と言うらしいが、事前に調べた距離ではウビラ石から鹿川湾まで2時間あれば着くはずなのに、これがもしウビラ石ならまたここから2時間なのか?
と早く休憩したい気持ちが頭を混乱させた。いっそ吐いてしまえば楽になるはずなのにそこまでじゃない。
しかし水筒の水を飲む回数も増え、確実に体が弱ってきてるのを感じれた。
この旅で1番辛い時間だった。
遠く先の方で山がきれてるのが見えたきっとあの先に鹿川湾がある。そう信じながらさらに1時間。
マンタの見れるダイビングスポット鹿川湾
PM15:00
やっと大きな湾が見えてきて、左には落水の滝がみてとれた。鹿川湾だ。
ここは西表島で唯一マンタの見れるダイビングポイントでもあり、ビーチも広く水浴びできる川もあり南海岸で1番のキャンプビーチになってる。
テント張るなら鹿川のビーチでしょう?と最初から決めていた。
しかし鹿川湾は広く今いる僕の位置から鹿川のビーチまでは恐らく2㎞以上はある。しかも湾の中に北風が入りこんできていて、
結構荒れてる。
悩んだあげく湾を通り過ぎた。その先にあるビーチを目指す。
30分で湾を抜けビーチに上陸しようとしたが、ここの浜は傾斜がありテントが張れそうもなかったので、さらに30分進む。
大きな浜に到着。
地図で調べるとここは南海岸では有名な浜「大浜」だった。
時計を見ると16時。
朝8時からほとんど漕ぎっぱなしの7時間。約40㎞ちょっとかな?こんなに1日で漕いだのは初めて。
しかし体は漕ぎ疲れたと言うよりは確実にうねりによる波酔いの疲労。砂浜にお尻をおとし、ぼっーと海を眺める。
「大浜」はウミガメの産卵でも有名なビーチ
亀の産卵地でも有名なこの浜、1人でテントを張るには充分過ぎる広さ。
疲れた体でダラダラビーチを散策。
すると砂浜が削れてる場所を発見「絶対に川がある!」
小さな水溜まりの先に細い川筋。
辿って山側に入っていくと
目の前に小さな滝。
「やった!水浴びできる!」
服も脱がずに汗だくの体を洗い流す。
腕を見ると日焼けの跡がひどかった。
すっきりしてカヤックまで戻る。
少し早いけど、テントを建ててする事もないので晩御飯の準備開始。
前日スーパーで買った石垣牛。
お米を炊いて少し早いけど、晩御飯。
お箸としゃもじを忘れたので、テントのペグで代用。
慣れないお箸だけど、どうしようもないくらいうまかった。
PM18:00
焚き火をしようかといくつか枯れ木を集めたけど、途中でやめた。
疲れてたとかではなく…でもなんでやめたかは覚えてない。
何もする事がないのでテントへ入り明日の航路やスケジュールを見ながら何より今日漕いできた航路や出来事を何度も思い出しながら。
気付いたらいつの間にか眠っていた。
西表島の最高の月と星空。そして波の音が癒してくれる
夜中、波の音で目が覚めた。
テントの外に出てみると真っ暗闇の中に浮かぶ綺麗な月が。昨日家の前から見たのと同じ月。
今日はえらい辺鄙な所で見てる。
西表島に来て、1番ハラハラドキドキした1日が終わった。
西表島一周シーカヤック冒険記第三話はこちらから
4月2日 南東3〜6m 長潮 最干潮9時 AM6:00 冷たい風がテントの隙間から入ってきた。予報通り北東の風が南東に変わった。 西表島一周にはツナ缶さえあれば生きていける 薄暗い中朝食の準備。 […]